”きちんと”考えるということ

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はじめに

法務である以上、業務の中で色々と判断をしていく際には、理屈で”きちんと”考えるということは常にしていかないといけないと思っています。この”きちんと”という部分ができてない人、法律知識がないと全くできないのではないかと勘違いしている人がいるように思いました。そこで今回自分なりに”きちんと”考えるということについて、ASPサービスに関する契約書に記載されることが多い損害賠償額の上限を定めることによって責任を限定する条項(以下、責任限定条項といいます。)にまつわるお話を例にとって、”きちんと”とはどういうことなのか考察試みたいと思います。

具体例(責任限定条項について考える)

責任限定条項は、例えば「前項の損害賠償の額は、月額利用料金の1か月分を上限とする。」といった条項のことをいいます。ASPサービスの場合には、責任限定条項は必ずと言っていいほど入っています。

しかし損害賠償額が制限されるというのはユーザー側から見るとリスクが大きいと感じるのも当然です。例えば上記の条項だと、月額利用料が10万円だとすれば、300万円の損害が生じても10万円しか請求できないですからね。そのためユーザーから交渉されやすい条項でもあります。

この条項について、”きちんと”考えられていないと、交渉された際に”ASPサービスの契約では普通だから原文のままでお願いいたします”、”社内規定上修正不可です”といった議論にならない返信をすることになってしまいます。これでは、法務の見解としても不十分ですし、やり取りの間に入る営業担当に対しても失礼だと思っています。(しかし、このような回答で済ませてしまっている方が少なからずいらっしゃいます。)

そこで、”きちんと”考えるためには、なぜASPでは責任限定条項を置くのか?という点に”疑問”を抱かないといけません。そこでASPサービスの特徴を考えてみると、ASPサービスは、(基本的には)定型的なサービスを多数のユーザーにインターネットを通じて提供するサービスです。企業の事業活動の中で利用されるASPサービスも多く、ASPサービスが障害等何らかの理由により当該企業に営業損害が生じるというリスクがあることもあります。そうすると、ユーザーが3000社(人)で、1ユーザーごとに10万円の損害が生じた場合には3億円の損害賠償請求をされるリスクがあります。

ひとたびこのリスクが発現してしまうと、サービス提供の継続のみならず会社の存続も危ぶまれる事態になりえます。このような理由からASPサービスでは責任限定条項を置くことが多いのだろうと考えられます。

次に、ASPサービスといっても色々なものがあるため、上記のリスクが本当に自社のサービスに該当するのか?という”疑問”や上限はどこまでにするのが適切なのだろうか?という”疑問”も湧いてきます。

必ずしも浮かんだ”疑問”にすべて説得的な理由づけで回答を作れるわけではないというところが法務のジレンマではあるのですが、”疑問”を持ち、その疑問に”向き合う”ことは法務が持たなければいけない姿勢であり、”きちんと”考えることではないかなと思いました。

最後に

「”きちんと”考えること」は、僕の中では、”疑問”を持ち、それに”向き合う”ことと定義づけることにしました(定義としては抽象的であまりいい定義ではないですが)。基礎的な法律の知識さえあれば”きちんと”考えることはできます。前述の例でいえば、僕は学生の頃はASPサービスという単語を聞いたこともありませんでしたし、実務上損害賠償額の上限が付けられることがあることすら知りませんでした(笑)。

今回、社会人になり仕事をしていく中で、理屈をないがしろにして業務をされている方等を見て、考えて業務をしてほしいなぁ、いや考えていないわけではない、”きちんと”考えられていないんだ、”きちんと”って何だろう?と自問自答したところから、独り言のように思いのたけを綴ってみました。この記事を書いてみて、偉そうに言ってみたけど自分も出来ていないときがあるなぁと改めて反省し、姿勢を見直すきっかけになりました。

ではまた~

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