法務部門の立ち上げについての考察

僕は法務部門を0から立ち上げた経験はありません。入社した時点である程度の業務フローなどが出来上がっていました。そこで「もし法務部門を0から立ち上げることになったら何をしなければならなかっただろうか」という観点から記事を書いてみました。

目次

法務部門立ち上げの思考プロセス

法務部門立ち上げの思考プロセスはこのような感じかなと思います。以下、この思考プロセスに沿って考察していきたいと思います。

法務部門立ち上げの思考プロセス

①法務部門の存在意義の明確化

②法務部門の業務範囲の決定

③業務内容の整理(リスト化)

④業務フローの策定

法務部門の存在意義の明確化

早速悲しい現実ですが、これ上層部が理解できていないことが多いです。上層部がこれを理解できていないままなんとなく法務部門を設置してしまうと、法的なリスクを指摘しても無視され続け、やがて単なる事務作業部門になりかねません。上層部が法務部門の存在意義を理解できない会社は、法務を設置する資格がないと思います。

では、法務部門の存在意義はどのようなものがあり得るか考えてみたいと思います。

例えば、法務は取引法務(事業法務)、組織・機関法務などに分類されたりします。また予防法務、戦略法務などなどいろんな分類分けがされています。自社の法務部門に期待されていることは何だろうと自問自答するのがよいのではないかと思います。

またこの存在意義は実際に法務部門を設置し、運営していく中で変わっていくものであるとも思っています。入社してすぐはさすがに無理ですが、周りの信頼を獲得していき自分の上司、そして上層部にこの存在意義を理解させられるところまでいけると、法務部門の存在価値がかなり高まるのではないかと思います。

ちなみに、僕が考えている今の自社の法務部門の存在意義は、”法的な知識や論理的思考を用いて事業活動を支えること”と考えています。これは愚痴ですが、全社的に”法務に相談する”ということが根付いてきていているのですが、弊社の社長は古い営業マンタイプなので法務に相談するとめんどくさいことを言われるという意識があるようですね・・・。どこの会社も色々根深い問題があると思いますが、うちの会社もそこそこ根深い問題が・・・(笑)

法務部門の業務範囲の決定

法務部門の主要な業務と言えばこのあたりでしょうか?

法務部門の主要な業務

・契約書のチェック

・契約書の管理

・事業部からの相談

・顧問弁護士、司法書士、弁理士等とのやり取り

隣接的な業務はこの辺りでしょうか?会社によってはむしろこっちがメインというところもありそうですね。

隣接的な業務

・取締役会(経営会議)の運営

・株主総会の運営

・商標、著作権当の管理

・Pマークの取得や運用

・稟議制度

まだまだ挙げられそうですが、法律が絡む業務、論理的な思考が必要な業務というのは、会社に山ほどありますので、法務部門がカバーできる業務はたくさんあります。

ただすべて拾ってしまうと、法務部門が本来やるべき業務に支障が出てしまう可能性がありますので、自己で設定した法務部門の存在意義の軸にどこまでの業務を法務部門の業務範囲とするかを決めていくのがよいかと思います。

人の時間と体力は無限ではありません。あまり色んな業務を拾いすぎると僕みたいに社内の残業ランキング上位に載ってしまいますよ・・・(笑)。

業務内容の整理

法務機能はありつつも法務部門はおかずに事業活動を行っていた会社が、いざ法務部門を置くときは既存の業務フローを確認し整理する必要があると思います。小規模組織でガラッと運用を変えても対応できる方しかいない組織であれば、0から最適なフローを組み上げて一気に変えてしまってもよいとは思いますが、大規模組織になればなるほど従来の運用を変えにくくなります。しかも、法務部門を立ち上げルールを組むと、個々の従業員からみると面倒な作業が増えるという側面が大きいです。できれば、合わせて既存の業務と比べて個々の従業員の手作業が減る等のメリットを提示できると良いです。

また業務内容を整理し、専門的知識がいらない事務作業はどれかも考えておきましょう。上司には”事務作業はできるだけ周りにやらせなさい”と言われます。もし一人法務なのであれば、あなたにしかできない仕事は会社にたくさんあります(一人じゃ足りないくらいに・・・)。

業務フローの策定

業務内容が整理出来たら、次は具体的な業務フローを考えていくことになります。

一例として、新規取引申請の業務フローを考えてみます。完全に紙とエクセルでやるのであれば、「新規取引申請書」に書いてもらう項目、書面をどのように回覧するか、反社チェックや信用調査は誰がどのように行うか、承認後の連絡方法、台帳管理の方法、承認済みの申請書の管理方法等を決めていかないといけないと思います。

また、会社にワークフローのシステムがあるのであれば、もう少し楽で項目、回覧ルート、チェック方法等を決めればOKかと思います。

うちの会社では、新規取引申請は、取引開始前に反社チェックと信用調査を行う目的で提出してもらっています。そのため、入力項目としては、一般的事項(起案者、部署、日付)に加えて、個別的事項(取引先名、取引先住所、代表者名、取引内容、取引予定金額等)を記載してもらっています。

事業部の回覧が終わった後は、法務に提出され反社チェックを行い、必要な案件は信用調査を行います。

承認後は、台帳入力、起案者への連絡、承認済み書類の保管をしています。この作業については、事務作業に分類されますので今は別の方にお願いしています。

また、うちの会社だけかもしれませんが、事業部の事務の方が事務職のプロで仕事のレベルが高いです。具体的な流れを決めるときには各事業部の事務の方も巻き込むと良いかもしれません。今では、新しくルールを決めた時も事務の方が事業部の全体に周知してくださいますし、書類に不備があれば法務に来る前にそこである程度はじいてくれるので、かなり助かっています。

さいごに・・・

リーガルテックがかなり流行ってますので立ち上げの際に、リーガルテックの導入を考えるのもよいと思います。一度紙とエクセルで始めてしまってから変えるというのも従業員に混乱を与えてしまいますので。ただ、一つのサービスを入れてしまうと他にいいサービスが出てきた時の切り替えがしにくいという側面があったり。かなり難しいところだなぁと思います。僕も今色々と自社にとって最適な形を模索中です。

ではまた~

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次